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MRI用造影剤(Gd造影剤)


・性質
(1) 常磁性物質(外部磁場が加えられるとその方向に磁化を生じる物質)Gd3+は内殻にある7つの不対電子により常磁性を示す。この不対電子の核磁気モーメントは1Hの660倍。
(2) Gd-DTPAはBBBを通過できない。関門が破綻している病巣では染まる。
(3) 胎盤を通過する。
(4) Gdの場合はイオン性の方が安全。(Gd3+なので、側鎖にマイナスが3つあるのが非イオン性。4つ以上で通算-1であり、これがイオン性。)イオン性造影剤の方が電化が残っている分、Gdを放さないためとされる。


・利点
上記の性質(1)によりT1緩和時間を短縮する。その結果、MRIのT1強調画像上ではこう信号を示す。実際の画像では病変部の信号が高くなり、病巣の存在診断や進展範囲等が明瞭になる。


画像(左):T1WIでは右側下顎骨体部に腫瘤が認められる。病変近心部では境界がはっきりしない。
画像(中):造影後のT1WIでは病変近心部の境界がはっきりしている。また、病変の辺縁だけが造影されており、内容物は造影されていない。よって嚢胞性の疾患であることがわかる。
画像(右):さらに造影後のT1WI画像から脂肪が目立たないようにする撮影法「PASTA」ではほぼ均一な厚さの嚢胞壁がはっきりと観察できる。


・欠点
 1/10000で軽度有害事象、2~3/10万で重篤な有害事象が発生すると言われている。副作用の種類は基本的に造影CTの副作用と同じのため、そちらを参照されたい。
 急性毒性の発症機序はCa2+に対する競合作用である。但し、投与量が少ないため、イオン性造影剤と非イオン性造影剤の差はCTの造影剤(ヨード製剤)のように顕著には現れない。
 造影MRIに特有、且つ重要な副作用として腎性全身性線維症(nephrogenic systemic fibro-sis, NSF)がある。以下にNSFについて詳述する。


<NSFについて>
皮膚及び結合組織の線維化により、関節の可動性障害その他器官に影響し、死に至る場合がある。 NSFは2008年に発表された。

日本での発症
ガドジアミド(オムニスキャン):因果関係が否定できなかったもの12件
ガドペンテト酸メグルミン(マグネビスト):2件
ガドテリドール(プロハンス):0件
ガドテル酸メグルミン(マグネスコープ):0件
但し、これらは2007年以前のものである。2007年に注意喚起されて以来、日本では0件である。その具体的な対策はeGFR =30~60ではマクロ環構造のGd造影剤を使用すること、eGFR=30以下では造影しないことである。また、新生児は腎機能未成熟のためNSFリスクが高く、造影MRI検査を施行すべきではない。