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CT用経静脈造影剤(ヨード造影剤)


・性質
化学名は2, 4, 6-トリヨードベンゼン
3, 5の置換基が体内の挙動に影響する。イオン性と非イオン性の違いはこの置換基の差である。
(1) 造影能:CTでは血液中のヨード含有率が1mg/mlでCT値は25~30HU上昇する。(血管造影では血管を識別するためには40mgI/mlのヨードが必要。)
(2) 粘稠度
浸透圧:生食の浸透圧濃度(280mOsmol/kgH2O)を1として1~11程度のものがある。一般的な非イオン性モノマーは600mOsm/kg(低浸透圧とされるが、これでもまだ2倍!!)
(3) 溶解度(親水性、疎水性):親水基により溶解度を高める。疎水基によりタンパク、細胞内侵入を助長する。親水:疎水の割合(分布係数)が決まっている。
(4) 造影剤は糸球体濾過によって排泄される。浸透圧利尿剤のような作用も起こる。
(5) 甲状腺に対して:造影剤のヨードはベンゼン環に結合しているため生体の代謝には利用できない。但し、ヨウ化物(I-)は含まれる。また、酵素のはたらきにより、微量のヨードが解離する。


・利点
上記の性質(1)により実際の画像では病変部のCT値が高くなり、病巣の存在や進展範囲等が明瞭になる。


画像(左):単純CTでは上顎左側歯肉癌が認められる(青矢印)。
画像(右):造影後のCT画像を見ると、病変の広がりが明瞭になっている。特に赤矢印部分に見えている部分も造影されており、ここも歯肉癌であることがわかる。ちなみに、その後ろの赤矢頭の部分は造影されておらず、歯肉癌ではないことがわかる(上顎洞の粘膜肥厚です)。


・欠点
様々な機序で以下のような副作用が起こる
(1) 心筋収縮能に対して:
高浸透圧のため体液移動がおこり、収縮能が高まる。血管拡張するが、実は狭窄血管ではあまり拡張しない。潅流がもともと良好な領域に活流がいっそう多く再分配される(盗血現象)。
高張液を注入すると電気的現象がゆっくりになる。電気刺激伝導も遅くなる。結果、徐脈などが起こる。また、不応期の変化等で心筋電流の飛び移りが起こり、心室細動の可能性もある。
(2) 血管に対して:
造影剤は異物である。よって内皮細胞が傷害される。内皮細胞は収縮し、細胞同士が引き離され、血管透過性が上昇する。逆に血管外の浸透圧が高まり、今度は血管外へ水が流出する(肺水腫)。
(3) 熱感と痛み
浸透圧に依存するが、詳細不明。浸透圧、化学毒性、血管作動性物質の萌出、血管進展、一過性の低酸素血症や虚血が原因か?
(4) 血液に対して
浸透圧により、血球の水分が失われ、しわしわぼこぼこになる。循環不全。
蛋白結合により、凝固因子とも結合し、凝固阻害。
(5) 腎毒性
尿細管細胞に対する直接的毒性作用(尿細管内膜破壊)。造影剤誘発性腎不全のリスクファクターは以下のものがある。
脱水状態...水分を補給し、造影剤を早く排出させるべき
既存の腎障害...正常部分の負荷が大きく、プラーク形成等しやすい。
高血圧...腎障害をともなっていることが多い。

・リスクの予知
喘息(正常の5倍のリスク)
アレルギー歴(4倍)
造影剤に対する有害反応の既往(11倍)
年齢60超
心疾患(4~5倍)
有害反応があった人の20~30%で再び起こる。毎回起こる訳でもない。

・他の薬物との相互作用
神経弛緩薬...造影剤のてんかん誘発性を増強。
ビグアナイド系...ビグアナイド系の排泄が遅れ、乳酸アシドーシスを誘発。前後3日くらい休薬が必要。

・妊婦に造影剤を投与してもよいか?胎児に影響は?
ある!! 胎盤を通過する。そして胎児に甲状腺異常(甲状腺機能亢進、低下の両方)をもたらすこともある。ヨードムンプス(耳下腺腫脹)を引き起こすことがある。禁忌ではないが、できるだけ避けるべき。

・母乳への影響は?
2~3日は授乳を控えること!! 生理的なバリアはあるが、乳汁に最大0.5%移行する。少量であるが、まれに偽アレルギー反応が報告されている。

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