口腔インプラント科臨床研修/大学院FAQ


口腔インプラント科臨床研修/大学院よくある質問コーナー

あなたの質問に教授の細川が直接お答えしました



■前期研修について

1.前期研修なのに専門外来に所属するのですか?

九州歯科大学附属病院では、歯科臨床研修プログラムAまたはBに所属しながら、口腔インプラント科専門外来において総合的かつ基本的歯科診療に加え基本的なインプラント治療を学べるプログラムが選択できます。総合診療部に所属はしていますが、口腔インプラント科専門外来において、全身管理などを含む幅広い研修が可能になっています。


2.プログラムの特徴について教えて下さい

12か月の研修のうちプログラムAでは最大5か月,プログラムBでは最大3か月を口腔インプラント専門外来と総合歯科,麻酔科,病棟などで研修し、プログラムAでは総合歯科,プログラムBでは学外の従たる施設(協力型施設)で5か月間研修することにより、基本的歯科診療からベーシックなインプラント治療まで研修することができます。


■前期研修終了後の大学院進学、専門医資格取得について

1.前期研修修了後、開業医に勤めた方が早く臨床が身に付くと聞いています

確かに、GP(かかりつけ医、総合歯科医)を目指すのであれば、必ずしも大学の医局に長期間残る必要はないかもしれません。ただ、歯科の場合、就職先は個人開業医が多くなります。個人開業医の場合、一旦就職してしまうとなかなか休みも取りにくく、院長(指導医)とウマが合わなくてもしばらくは勤め続けなくてはなりません。また、開業医は、様々な特徴があり(これは患者さんにとっては良いことなのですが)院長の得意分野というものがどうしてもあります。ただ、卒後間もない若いDrにとっては、院長の得意な分野しか深く学べないという問題点にもなってしまいます。もっと別の分野も勉強したいと思っても、そう簡単にはできないのです。要するに、前期研修終了後の就職先を間違ってしまうと、実際は、なかなかヤヤコしいことになるというのが現状です。その点、大学の医局に残れば、様々な医療機関に勤務する機会が生じますので、多くのものを見て勉強することが可能です。また、多くの学会や治療法の勉強会などに参加できますし、比較的自由に研修の機会を得ることができます。研修終了後も大学に数年残って専門医資格を得ながら、多くの医療機関で診療の経験を積み幅広い知識と技能を身につけるのは、若いDrにとって将来とても役に立つものと思います。


2.なぜ、専門医資格が必要なのですか?

専門医資格など、必要ないかもしれません。必要かどうかは、あなたの考え方、つまり、どのような歯科医師になろうとするのかということで決まるように思います。インプラントなどの特殊な治療は、歯科矯正などと同じで、歯学部の6年間では単独で治療可能なレベルまでの教育はされません。卒後臨床教育(専門診療科の研修)によって、治療が可能になってきます。現在の歯科医療にとって、インプラント治療がどの程度大切な臨床技術なのかについては、日本歯科医学会の専門分科会の中で、口腔インプラント学会が口腔外科学会を抜いて最大の会員数(1万人超)となっている事実を踏まえて、あなたが判断して下さい。我々は、一般の歯科診療に加えインプラント治療が単独で確実にできるようになるためには、最低でも5年間の研修期間は必要と考えています。専門医資格は、その結果与えられる単なる紙切れです。ですから、資格自体はあまり意味がないものかもしれません。重要なのは、あなたが歯科医師として、単独でインプラント治療を行うことができ患者さんを確実に幸せにできる臨床能力を、どのようにして、きちんと身に付けるかということだと思います。自分の将来像、歯科医師像をよくイメージしてみて下さい。その中から、進路は決まってくると思います。


3.大学院に行く意義が見いだせません

専門医資格を取るのに、最低5年間の在籍期間が必要ということで、大学院生として4年間、その後1年医局に在籍して合計5年間となります。当科では、前期研修終了後大学院生として医局に残ることを基本的なスタンスとしています。大学院生は、各自研究プロジェクトを持ち、4年間で最低1つの論文を投稿、受理され学位審査に合格して博士(歯学)の学位を取得することが求められます。ではなぜ、臨床医になるのに基礎研究をしなければならないのでしょうか? これには、いくつかの答えがあります。

1)基礎研究で幅広い知識を身につけることができる

歯科医学は、将来、必ず外科系の臨床から内科的な臨床に移行します。内科的な全身疾患への幅広い知識、遺伝子レベルでの個体差医療、組織工学と再生医療、歯科疾患への薬物療法などについて十分に知っていなければ、未来の歯科医療へ対応できません。いわゆる、『歯を削るのが上手』『入れ歯づくりが巧い』といったような単純な技量を身につけるだけでは、将来、適切な歯科医療ができなくなってきます(信じて下さい!)。虫歯も歯槽膿漏も細菌感染症です。日常的な歯科治療は、明らかに内科的にコントロールできる可能性があるエリアであることを今一度考えてみて下さい。20年後の歯科医療を考えたとき、医療現場の第一線に立っている臨床医のあなたにとって、大学院での基礎研究の経験と知識は大きな宝になるものと考えています。

2)論理的思考が身に付く

一般歯科医師やかかりつけ医が治療できない難症例を専門医として治療するとき、最も重要なことは論理的思考です。問題点をリストアップして分析し、治療方針を立て、治療効果を再評価しつつ治療方針を修正しながら、患者のQOLの最大化を図るステップは、まさに質の高い基礎研究の遂行過程、論文作成の過程そのものです。研究の遂行能力は、質の高い臨床を行う原動力になります。逆に、研究がうまく進められない人は、臨床にも限界があるように思います。

3)学位を後から取るのは大変

卒後、かなりの年月が経って、ベテランの勤務医や開業医になってから、突然大学に戻って基礎研究を始めて学位取得を目指す人がいます。理由は様々で、臨床をやってきて、基礎研究を純粋にしたくなったという人もいれば、歯科医師会の役職に就くために肩書きとしての学位が欲しくなったという人もいるようです。また、自分の歯科医院の看板や名刺に博士という肩書きを入れたくなったという話も聞きます。臨床医としては、学位は無いよりもあった方が良いようですが、前述のように大学を離れてしばらくしてから基礎研究に戻るのは、大変です。卒後間もない若いうちに、体力的にも余裕があるうちに大学院4年間で学位を取っておく方が、臨床医としての人生の中で(遠回りなようですが)ムダな時間を省くことができるように思います。せっかく専門医を狙うのなら、学位も一緒にというのが私の考えです。

4)社会性が大きく広がり,かけがえの無い経験ができる

基礎研究においては、医学部、歯学部、薬学部、農学部、理学部、工学部などの垣根はありません。生化学会などでは、ノーベル賞候補の教授でも『先生』ではなく『さん』付けで呼びます。要するに、基礎研究における研究者の評価は、職位(肩書)や所属部局、研究機関の優劣ではなく、単に『良い仕事をしたかどうか』だけで決まります。大学院での研究発表の場には、あらゆる分野の研究者が世界中からやってきます。言い換えれば、世界中の研究者がライバルです。こんな世界で、数年間仕事をしてみるのも悪くないように思いますがいかがですか。歯学部は、小さな世界です。歯学部出身のDrは、歯科医療の世界しか知らない『口の中の蛙』になりかねません。大学院で研究することにより、自分の世界が大きく広がりグローバルな視点を持つことが可能になります。海外での学会発表では、文科省の科学研究費の補助などが出れば旅費も支給されます。外国での歯科医療を垣間みることも可能です。大学に残らない限り、このような経験はできません。また、別の視点として、私は、臨床医が社会性豊かでグローバルな視点を持っているかどうかは、患者からの信頼を得るためにも極めて重要な素養だと思っています。

5)くだらない話ですが大学院生は学生です

大学院生は、臨床医として関連医療機関で非常勤の診療をしますので一定の収入を得ていますが、身分は大学院の学生です。従って、多くの学割が適用されます。JRなどの学割だけでなく、歯科臨床関連の学会、シンポジウム、カンファレンス等の多くで非常に安い参加料で参加できることがあります。また、多くの臨床関連の研修会では、大学関係者、大学院生は無料招待ということが多く、(勤務医だと、それなりの参加費が必要になりますので)目に見えない金銭的メリットは多大なものがあります。卒業後間もない若手のDrは、様々な臨床関連の研修会で勉強する絶好の時期なのですが、大学院に所属していると、自己負担無く研修や講演会に参加できるチャンスが山ほどあります。

臨床医としての人生の一時期、大学院に残って研究に打ち込む意義を少しでも理解していただけれれば、幸いです。

私自身、大学院では、生化学を専攻し、数年間は基礎研究に打ち込みました。今の私の臨床は生命科学の基礎的知識と論理的な思考能力によって支えられているように思っています。そして、これからますます重要になる海外の臨床医との情報交換/英文の医学文献の理解に必要な英語でのコミュニケーションスキルは、私の場合、すべて大学院時代に培ったものと言っても過言ではありません。

6)開業する時,融資条件が有利になる

大学卒業後、大学の医局に残り、大学院を出て専門医資格を取って、開業を目指すと,卒後の自己研鑽や専門性が評価され(融資申込み書類の中で卒後得た学位や専門医資格などが形になって記載できますので、事業計画の信頼性が増し融資の審査において非常に有利です)比較的少額の自己資金で高額の融資が引き出せます。このことは、余り表立って論じられることはありませんが、将来開業を目指している人にとっては,大学院に行き専門医資格を取ることによって有利な融資条件を引き出せることが大きなメリットになります.

7)総合病院などの病院歯科へ就職できる可能性が増す

開業せず,大きな病院に一生勤めたい,と思っている人もいると思います.実は,多くの総合病院の歯科・歯科口腔外科は,特定の大学の医局とつながっています.大学卒業後、大学の医局に残り、大学院を出て専門医資格を取って、医局からの人事で総合病院の歯科に勤務している先生が非常に多いのです.開業医に何年か勤めた経歴だけでは,(余程のチャンスに恵まれない限り)そう簡単には大きな病院の歯科へ就職することは困難です.


4.大学院に行く経済的余裕がありません

大学院に行くと学費が必要になります。実際の生活費などを考えると、『自活』できるかどうか(両親からの仕送り無しで生活できるか)が心配ということだと思います。大学院生の収入としては、医局関連医療機関での外勤(アルバイト)が主なものになります。その他に、日本学生支援機構(旧育英会)の奨学金を給付してもらっている院生も多数います。実際、当医局の大学院生がどのように『自活』しているかについては、ぜひ見学に来て頂いて、直に大学院生に聞いてみて下さい。


是非、正式に応募する前に医局の見学に来て下さい。大歓迎です。正木(マサキ)までメールで連絡して下さい。お待ちしています!


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