KOKABU LAB

PROFILE

2004年 九州歯科大学 歯学部歯学科 卒業
埼玉医科大学病院 歯科口腔外科 研修医
2006年埼玉医科大学病院 歯科口腔外科 助手
2007年埼玉医科大学病院 歯科口腔外科 助教
2010年埼玉医科大学大学院 博士課程臨床医学研究科 口腔外科学専攻 修了
埼玉医科大学病院 歯科口腔外科 医員
Harvard school of Dental Medicine (Department of Developmental Biology) 博士研究員
2013年埼玉医科大学病院 歯科口腔外科 助教
2014年九州歯科大学 健康増進学講座 分子情報生化学分野 准教授
2018年九州歯科大学 健康増進学講座 分子情報生化学分野 教授

LAB MEMBERS

AKI MIYAWAKI(宮脇 有希)…[Graduate Student, 大学院生]
THIRA ROJASAWASTHIEN…[Graduate Student, 大学院生]
HIRONORI FUJITA(藤田 浩範)… [Graduate Student, 大学院生]
NAO KODAMA(児玉 奈央)… [Graduate Student, 大学院生]
MAIKO IKEDA(池田 麻衣子)…[Research Assistant, 研究補助員]
ASAKO INOUE(井上 愛沙子)…[Research Assistant, 研究補助員]

OUR RESEARCH

1. ポリシー

 大学卒業後,医学部の歯科口腔外科に10年間籍を置き,臨床活動を行なってきました.2014年に本学に赴任してからの主な活動は教育と基礎研究ですが,臨床現場から決して離れることなく,Clinical Questionに基づく研究を展開できるPhysician scientistであり続けたいと思っています.

2. 骨と骨格筋

 骨代謝研究で基礎研究のトレーニングを受けましたが,現在は骨と生理機能的に切り離すことができない骨格筋の両面から運動器を包括的に解析しています.特に骨や骨格筋に存在する味覚受容体,中でもうま味受容体に着目し,サルコペニアや骨粗しょう症への応用を見据えた研究活動を行っています.

3. うま味受容体
[図1]
うま味受容体を基軸としたアミノ酸ネットワーク

 口腔に存在するうま味受容体は,うま味という豊かな味わいを脳に伝え幸福感をもたらすとともに,骨格筋の構成材料となるうま味物質(アミノ酸)の摂取を促進します.ところが近年,このうま味受容体が口腔以外のさまざまな組織に存在し,その機能を制御するなど,うま味感覚の受け取り手にとどまらない役割に注目が集まっています.これまでの私達の研究から,骨格筋そのものに存在するうま味受容体は,骨格筋の増加に関与していると考えています.また,小腸に存在するうま味受容体は,小腸上皮細胞の維持に関わっているとも予測しています.以上から,「舌で受容したアミノ酸を脳で認知し,摂取したアミノ酸を小腸で吸収,そして骨格筋に貯蔵されるプロセスを,それぞれの臓器に存在するうま味受容体がコントロールする」という大胆な仮説を立て,現在その検証を行っています(図1).将来的に,うま味受容体を適切に活性化させることができれば,サルコペニアの予防や治療に役立つのではないかと期待しています.

4. 食から健康長寿を支える

 オーラルフレイル対策にも私達の観点から取り組んでいきたいと思っています.オーラルフレイルは,全身的なフレイルの初期段階です.“食事を楽しむ”という人生の大きな喜びを失うと共に,低栄養による生命維持に直結しますが,オーラル・フレイルに見られる口腔機能低下や軽微な摂食嚥下障害は,関連する筋のサルコペニアと捉えることができるからです.
 サルコペニアや骨粗しょう症の罹患率の高さやその病態を考えれば,その予防や治療を担うものは分子標的薬などの高価な薬剤ではなく,運動や健全な食生活,それをベースとした天然化合物などであることが望ましいと考えています.そのため,上記のうま味成分だけでなく,フラボノイド,ローヤルゼリー,ジテルペンのゲラニルゲラニオールなど食品由来成分に注目し,企業とともに機能性食品の開発を目指した研究活動を積極的に行っています.以上のように歯科医療人として“食”にこだわった研究活動を展開しています.

5. 舌がんの筋肉内浸潤
[図2]
がん・骨・骨格筋

 舌は骨格筋(横紋筋)が粘膜で覆われた特殊な器官であり,その粘膜から発生する舌がんは代表的な口腔がんです.この舌がんには,がん組織が内部の筋層へ向かって発育するタイプと,表面にとどまるもの,外側に向かって成長するタイプに分かれます.当然,筋肉内部に入り込んでいく“がん”の方が局所再発やリンパ節転移することが多く,予後が悪いのは想像に難くありません.
 そもそも骨格筋に転移する“がん”がほとんどないことから,基本的に骨格筋は“がん”にとって好まざる環境ではないかと考えています.それにも関わらず,筋内に向かって積極的にがん細胞が浸潤していくケースでは,筋肉が“がん”の好む環境に変化している可能性が否定できません.一方で,乳がんや前立腺がんがそうであるように,基本的にがんは骨に浸潤・転移やすく,“がん”にとって骨は好む環境であると考えられています.私たちはこのことに注目しています.すなわち骨と骨格筋のそれぞれと,がん細胞との関係性を比較する実験を行うことで,“がん”が筋肉内部に入り込んでいくメカニズムがわかるのではないかと予想しています.将来的に,がん細胞がそもそも骨格筋を好まない“理由”を見つけることができれば,舌がんの筋層浸潤をコントロールできるのではないかと信じています.

論文,研究資金獲得,学会発表等はリンク(Research Map)をご確認ください.

SELECTED PUBLICATIONS

・Shirakawa T, Miyawaki A, Matsubara T, Okumura N, Okamoto H, Nakai N, Rojasawasthien T, Morikawa K, Inoue A, Goto A, Washio A, Tsujisawa T, Kawamoto T, Kokabu S. Daily Oral Administration of Protease-Treated Royal Jelly Protects Against Denervation-Induced Skeletal Muscle Atrophy. Nutrients. 2020 Oct 11;12(10):3089.

・Miyawaki A, Rojasawasthien T, Hitomi S, Aoki Y, Urata M, Inoue A, Matsubara T, Morikawa K, Habu M, Tominaga K, Kokabu S. Oral Administration of Geranylgeraniol Rescues Denervation-induced Muscle Atrophy via Suppression of Atrogin-1. In Vivo. 2020 Sep-Oct;34(5):2345-2351.

・Ogawa M, Yaginuma T, Nakatomi C, Nakajima T, Tada-Shigeyama Y, Addison WN, Urata M, Matsubara T, Watanabe K, Matsuo K, Sato T, Honda H, Hikiji H, Watanabe S, Kokabu S. Transducin-like enhancer of split 3 regulates proliferation of melanoma cells via histone deacetylase activity. Oncotarget. 2019 Jan 8;10(3):404-414.

Kokabu S, Nakatomi C, Matsubara T, Ono Y, Addison WN, Lowery JW, Urata M, Hudnall AM, Hitomi S, Nakatomi M, Sato T, Osawa K, Yoda T, Rosen V, Jimi E. The transcriptional co-repressor TLE3 regulates myogenic differentiation by repressing the activity of the MyoD transcription factor. J Biol Chem. 2017 Aug 4;292(31):12885-12894.

Kokabu S, Lowery JW, Toyono T, Sato T, Yoda T. On the Emerging Role of the Taste Receptor Type 1 (T1R) Family of Nutrient-Sensors in the Musculoskeletal System. Molecules. 2017 Mar 15;22(3):469.

・Rojasawasthien T, Shirakawa T, Washio A, Tsujisawa T, Matsubara T, Inoue A, Takahama U, Nakashima K, Kokabu S. Vignacyanidin Polyphenols Isolated from Vigna Angularis Bean Promote Osteoblast Differentiation. In Vivo. 2021 Mar-Apr;35(2):883-888.