口腔(こうくう)癌は男性の癌の4%、女性では2%くらいであまり頻度の高い癌ではありませんが、年間約6,000人の方が罹患しており、高齢化社会の進行とともに患者さんの数は増加しています。口腔癌で最も多いのは舌癌で、歯肉癌、口底癌、頬粘膜癌などが続きます。口腔癌の危険因子として重要なものは喫煙と過度な飲酒です。特にその両方が重なると危険度は大きく増します。その他に不潔な口腔環境、合わない入れ歯や放置された虫歯などによる刺激も良くありません。
口腔は顔という個人を象徴する重要な部分を構成しており、“食べる”、“話す”、“呼吸する”という生活の質に大きく関わる部分です。身近に患者さんがあまり居ないせいか、少し関心が薄いようですが、この部分に生じる癌は直接生命に関わるのみならず、“生活の質”にも重大な影響を与えることになりますので、ぜひ、早期発見に関心を持ちましょう。




早期発見のために月に1回はセルフチェックを
口の中は鏡などを使えば誰でもご自分で簡単に見ることができる部分です。初期の口腔癌は通常痛みなどの自覚症状を伴いませんので、月に1回程度ご自身でチェックするのが良いと思います。初期の口腔癌は“潰瘍(治りにくい傷)”、“ただれ”、“しこり”や“できもの”、“白い斑点”などさまざまな形を呈します(写真1)。口腔粘膜にはそれ以外にもさまざまな病気が生じますので、ご自身のチェックで何かの変化を見つけたらかかりつけの歯科医院か口腔外科専門医に相談し、専門的に診るべきかどうかを判断してもらうようにしてください。




■セルフチェックの仕方
明るい光と鏡を用意し、入れ歯がある場合ははずしてください。


1. 唇を指で引っ張り、唇の内側や前歯の歯茎のチェック
2. 頭を上にそらし、上あごの粘膜のチェック
3. 頬の粘膜を指で外に引っぱり、上下の奥の歯茎と頬の粘膜のチェック
4. 舌を前に出し、舌の表面と側面、下面のチェック



■口腔癌の治療
初期の舌癌や頬粘膜癌では放射線療法が有効な場合もあるのですが、その他の口腔癌の治療の中心は手術療法となります。もちろん、化学療法、放射線療法などと組み合わせてなるべく治療後の“生活の質”が低下しないような配慮がなされています。不幸にして広範囲な切除を余儀なくされた場合でも再建療法(さまざまな組織を移植し、骨や軟組織を補填する)が行われ、形態と機能をなるべく回復する努力が払われています。再建された組織にインプラントを植え込み、咬む機能を改善することも行われます(写真2)。しかし、やはり機能を温存し、治療後の障害を少なくするには早期発見、早期治療が最も重要です。初期の口腔癌の場合は5年生存率が90〜95%、中等度でも70%以上でかなり治療成績は向上しています。



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