デンタルエックス写真上に映る疾患のうち代表的なもの、鑑別しにくいものについて解説していきます。

(1) 齲蝕
(2) バーンアウト
(3) 咬耗症、磨耗症、WSD
(4) 根尖性疾患
(5) 根尖性骨異形成症
(6) 透過性充填物、窩洞
(7) 問題

 

 

(1) 齲蝕
 放射線学的な齲蝕の分類は保存学などで見られるC1〜4の分類と定義が異なります。
これは30%~50%の脱灰率を超えた時点でデンタル写真上で透過像として初めて観察されるためです。
 つまりデンタルエックス線写真で見られる透過像の範囲より齲蝕の病巣はより広がっていると考えていいでしょう。

C1
エナメル質1/2以内の透過像

C2
エナメル質の1/2以上を超えるが象牙質までは達していない透過像

C3
エナメル質を超え象牙質の幅1/2は超えない透過像


C4
象牙質の1/2を超える透過像

 

 

(2) バーンアウト
歯頸部における濃度増強現象のこと。これは解剖学的に歯頸部がくびれているため、この部分の濃度が増強されあたかも歯頸部齲蝕様のX線透過像を呈する。
実際に齲蝕があるわけではない。歯頸部の齲蝕はくさび状を示し、バーンアウトは歯頸部に帯状に観察されるので、エックス線透過像の形に注意が必要である。

 


(3) 咬耗症、摩耗症、WSD
  咬耗症
  咀嚼によるは表面の実質欠損である。上下の歯のエナメル質が互いに咬耗し、ついには象牙質が露出するようになる。
  エックス線画像では上下エナメル質の咬耗は歯冠の平滑化及び短小化として現れ、二次象牙質の形成は歯髄腔、根管の縮小として現れる。
  時として、エナメル質形成不全や齲蝕との鑑別が必要である。
  咬耗症は二次象牙質の形成が顕著である。


 磨耗症
 磨耗症は歯ブラシや爪楊枝の誤った使用や、パイプによる喫煙などの習慣的な外力による歯表面の実質欠損である。
磨耗症も二次象牙質の形成を促すが、髄質が完全に消失することがある。歯ブラシによる摩耗の場合、
歯頸部を中心としたエックス線透過像を示すことから、齲蝕と間違えることがあるので注意が必要である。

 


(4) 根尖病巣
根尖部歯根膜腔の拡大及びそれに連続したエックス線透過像として見られる。
透過像の周囲に歯槽硬線と連続する一層の辺縁硬化像が見られることがある。
境界明瞭な類円形のエックス線透過像が認められ、大きさが8mm以上の場合は歯根嚢胞と診断することができる。
しかし、8mm以下の場合、歯根肉芽腫と歯根嚢胞をエックス線画像で鑑別することは困難である。
失活歯がない場合根尖性骨異形成症である可能性も見逃せない。

歯根肉芽腫


歯根嚢胞


 

(5) 根尖性骨異形成症
生活歯の根尖部に限局した透過像、または透過像内に不透過像が混在する。
但し、 初期は根尖部に限局した透過像のみであり、不透過像は存在しない。そのため、慢性根尖性歯周炎との鑑別が必要である。


 

(6) 透過性充填物、窩洞
これは齲蝕ではない。
これは透過性充填物が充填されているか、あるいは充填物がとれた状態である。
X線画像上で見分けるには、欠損部の辺縁をみることが重要である。
齲蝕の場合とは異なりこの画像は辺縁が平滑である。
このことから、窩洞形成されていると考えられる。