以前は歯槽膿漏とよばれていた生活習慣病にも加えられている疾患で、軽度のものまで含めると40歳台で40%以上が、60歳以上では実に90%以上の人が罹患しています。(HugosonとJordan(1982)の調査による)


歯周病は、主にプラーク中の口腔細菌が原因となって生じる炎症性疾患であり、歯肉と歯周炎とに大別されます。
歯肉炎は歯肉にのみ炎症を生じたもので骨などの破壊は引き起こさないのですが、歯肉炎を放置し、歯周炎に進行すると歯周組織の破壊、つまりセメント質、歯根膜、歯槽骨など破壊を引き起こしてしまいます。
従って、X線所見を呈するようになるのは歯周炎が進行してからということになります。


歯槽骨の吸収(破壊)が重度に進行するとX線像が歯肉癌に非常に似通ってるため鑑別が困難な場合があり、注意が必要です


ただ、全ての吸収像が歯周病と歯肉癌で似ているというわけではありません。


歯周炎の骨吸収像としては大きく2つの様式、水平性骨吸収と垂直性骨吸収があります。

(1)水平性骨吸収は罹患部の歯槽骨縁が一つの歯群で平行に吸収していく場合
(2)垂直性骨吸収は一箇所が特異に吸収していく場合


それではX線所見でどのようなもの挙げられるか見てみます。

  1. 境界明瞭で辺縁平滑な骨吸収像
  2. 歯槽骨が吸収された部位に小骨片は見られない
  3. 慢性に経過した症例では周囲に骨硬化像を伴うことが多い
  4. 歯周病の多くを占める成人性歯周炎では全顎的に見られることが多い。侵襲性歯周炎では前歯、大臼歯部に左右対称性に見られる。

このような骨吸収が起こるのは、プラーク由来の因子あるいは炎症反応自体によって破骨細胞の活性化が惹起され、歯を支持する骨が破壊されるのです。

 


参考文献

編集 石井烈:歯周病学,株式会社,永末書店,東京,1996