(1)研究スタッフ
 教 授   小林 繁
 助教授   後藤哲哉
 助 手   中牟田信明
 

小林

肉眼解剖学は臨床解剖学的観点から顎関節、上顎洞の形態など口腔領域を中心に行っている。 
比較解剖学は咀嚼器官を食性,系統発生の2つの観点から,人の咀嚼機能の成り立ちを解析する.
形質人類学は歯ならびに歯列弓の大きさ、歯冠形態の特徴を統計的に解析し,日本人の起源を探る.

後藤

a. 破骨細胞の骨吸収機能に関する研究
培養ウサギもしくはラット破骨細胞を用い破骨細胞がどのようにして骨吸収を行っているのか、特に破骨細胞の吸収ー遊走のサイクルに着目し、骨吸収サイクルの調節機構について、得に低分子量GTP結合タンパク質との関係に注目して検索を行っている。

b. 神経ペプチドと骨代謝の関係について
神経ペプチド、特にサブスタンスP等のタキキニンファミリーに着目し、骨組織においてそのレセプターの存在を免疫組織化学的に調べるとともに、タキキニンが破骨細胞の骨吸収、骨芽細胞の骨形成にどのように関与しているかを検索している。

c. 各種インプラント材料に対する骨芽細胞様細胞、口腔上皮細胞の初期接着に関する研究
インプラント材料、主にチタンおよびハイドロキシアパタイト、に対する骨芽細胞様細胞Saos-2、ラット口腔上皮細胞の初期接着について検索を行っている。

中牟田

a. 顎顔面の形態形成に関する研究
b. 哺乳類の精子発生に関する研究
c. 環境ホルモンに関する研究

歯胚形成に及ぼすニューロトロフィンの作用をマウスの下顎器官培養系を用いて解析。転写因子p63による歯胚発生制御のメカニズムについても検討を行っている。また,精祖細胞の増殖と分化をin vitroで再現する培養系とその評価法を開発中。雄の生殖腺機能に対する環境ホルモンの影響なども調べている。


 

教室創立当時から続く,咀嚼器官の比較解剖学的研究,歯ならびに頭頸部の形質人類学的研究に加え,最近細胞の分子生物学的研究,臨床研究学的研究,法医歯科学的研究,頭顔部の形態形成の6系統の研究を行っている.1996年から2000年までの約5年間の研究成果は,総論5編,原著論文45編(英文22編,和文23編)でこのうち学位論文14編である.

1)咀嚼器官の比較解剖学的研究
歯,歯列弓,下顎骨,顎関節,口蓋,舌,咀嚼筋等の咀嚼機能に関連する諸器官を食性,系統発生の2つの視点から,咀嚼の意義を比較解剖学的に解析している.5年間の研究成果は総論1編,論文2編(英文1編,和文1編)で,うち学位論文1編である.1997年以降論文ならびに研究発表が止まっている.研究資料のストックはあるので,この分野での人材の養成をしなければならない.

2)歯ならびに頭頸部の形質人類学的研究
日本人とくに九州人の形成史を明らかにするために,九州本島・五島・種子島・石垣島・台湾島・中国東北地区の諸民族の歯列弓ならびに歯冠形質による検討を行っている.5年間の研究成果は,論文20編(英文2編,和文18編)で,うち学位論文11編である.
現在,中国瀋陽医学院と長崎大学口腔解剖学と2つの研究プロジェクトがある.中国瀋陽医学院富院長との共同研究として,中国東北部ならびに雲南省在住の諸民族の頭頚部並びに歯の形質人類学的研究を行っている.また,長崎大学とは「琉球列島住民の地理的変異」として平成8年〜12年まで科学研究費の補助を受け,宮古島・伊良部島での調査を行った.
この分野では金皓大学院生(現瀋陽医学院解剖学助教授)を始め,学位取得者が出たが,まだ,Archsoral Biol. 1編のみでAna, J, Anthop他の海外誌への投稿が無く,研究の高度化への努力をしなければならない.

3)細胞の分子生物学的研究
主として,骨芽細胞,口腔粘膜細胞,唾液腺細胞由来の培養細胞を用いて,蛋白質脱リン酸化の面からみたアポトーシスの研究が中心である.羽地助教授の徳島大学教授栄転後は,中牟田助手を中心に器官培養により行っている.
5年間の研究成果は,総説1編,論文22編(英文18編,和文4編)うち学位論文1編である.

4)臨床解剖学的研究
鹿児島市立病院歯科口腔外科との共同研究で,上顎洞底の形態を3次元CTを利用して,成長・加齢変化を調べている.また,顎関節周辺,咽頭・喉頭の解剖も行っている.
この分野での5年間の論文は,総説3編,論文1編(和文)である.学会発表は毎年行っているが,1997年以降この分野での論文がないので早急に投稿しなければならないと考えている.

5)頭顔部の形態形成に関する研究
頭顔部の形態形成をマウス胎子を使い遺伝子検索も視野に入れて行っている.この分野での5年間の論文は原著1編(英文)のみであるが,これから発展が期待される分野である.